はじめに
北海道の現状と課題
人口減少・少子高齢化と地方の過疎化
本道の人口は生産年齢人口や年少人口の減少、高齢者人口の増加により、1997年の約570万人をピークに、2060年時点で約319万人まで減少すると見込まれています。特に、全市町村の8割が過疎地域になっており、人口規模が小さい市町村ほど人口減少が進行していくと見込まれています。
北海道の経済情勢
本道の経済は、2012年から回復基調を示しており、建設業や小売業、製造業が若干減少しているものの、サービス業や農林水産業が増加している傾向にあります。
北海道の都市構造
本道は全国の22%を占める広大な面積に都市が点在していることから都市間距離が全国平均の約2〜3倍と長い広域分散型の都市構造となっています。食や観光を担う「生産空間」は地方部に広く分布しているため、「生活サービス」を市街地に、「いのちの安心」を圏域中心都市などに、それぞれ頼りながら、「生産空間」に住み続けられる、北海道型の地域構造の保持・形成が重要です。
大規模自然災害リスクの高まり
広大な面積と長い海岸線を有する本道は、地震・津波、火山噴火、豪雨、暴風雪、竜巻などの様々な自然災害のリスクを抱えており、高齢者、障がい者、乳幼児など要配慮者への避難行動の支援や避難後の心のケアなどといった個別支援までを見据えた、自治体や関係団体などが連携する防災まちづくりが重要です。
地球環境問題の深刻化とエネルギーの変化
積雪寒冷・広域分散型という地域特性を有する本道では、冬期の暖房用灯油や移動に使用する自動車のガソリンなど化石燃料の使用量が多く、全国平均に比べると一人当たりの二酸化炭素の排出量が高くなっています。一方、2019年度の本道の新エネルギー導入状況は365.1万kWであり、2012年度と比べると約2.5倍に増加しています。
北海道の地域交通・物流
本道の高規格道路の整備は全国に比べ大きく立ち後れています。また、鉄道については、1970年度末に比べて2021年度末には約6割にまで縮小しているほか、バス交通においても、輸送人員、乗合バス事業の経常収支比率ともに近年では減少傾向にあります。
近年、電子商取引(EC)市場の拡大に伴い、全国的に宅配便の取扱量が増加していますが、道内の物流を担っている道路貨物運送業従事者数は減少しており、地域の産業を支える安定的かつ持続的な輸送ネットワークの確保や、過疎地における輸送効率の低下、バスやトラック運転手などの輸送を担う労働力不足への対応が課題となっています。
北海道の優位性
地理的特性
道内の広大な平野や台地、四方を囲む海は、農林水産業の重要な生産基盤となっており、世界に対する日本の北の玄関、物流拠点としての役割が期待されています。また、首都圏から遠距離にあり、大規模災害が発生した際の同時被災リスクが低いことから、首都圏などのバックアップ機能も期待されています。
優れた自然環境と固有の文化
本道は知床世界自然遺産や23の自然公園を有するなど、豊かな自然に恵まれています。こうした自然環境は、生物の多様性を維持するとともに、清浄な空気、水、土壌を生み出しています。また、四方を太平洋、日本海、オホーツク海に囲まれ、大雪山系など雄大かつ変化に富む山岳、釧路湿原といった日本を代表する広大な湿原、美しい景観の天然湖沼、そして冷涼な気候など、四季を通じて変化に富んだ自然環境を有しています。
高い食料自給率
広大な農地や豊富な水産資源を有する本道では、食料自給率が約200%と高い水準で推移しているほか、農業生産額、水産業の漁獲量・漁獲高が全国1位であるなど、国内の食料の安定供給に大きく貢献しています。また、四季折々の自然の恵みを背景に、海や大地の新鮮で豊富な素材を生かした安全でおいしい魅力ある食の宝庫としても、国内外から注目されています。
豊富で多様なエネルギー資源の活用
本道には、太陽光や風力、雪氷冷熱、バイオマス※、地熱といった多様なエネルギー資源が豊富に存在しており、地域特性を活かした大規模発電施設の導入や熱利用※に関する取組などが進められています。エネルギーは、人々の生活や産業活動に必要不可欠なものであり、本道はエネルギーの生産拠点として大きな可能性を秘めています。
寒冷地で培われた優れた技術
本道の積雪寒冷地という気象条件を背景に、高気密・高断熱の寒冷地住宅などの様々な省エネ・新エネ技術が開発されてきています。例えば、世帯あたりの暖房用灯油使用量は、1975年の年間4,500ℓに比べ、2020年には800ℓとなっており、住宅で消費されるエネルギー量が大幅に削減されてきました。
北の住まいるタウンの目指す姿と方向性
誰もが心豊かに住み続けることができる、安全・安心で暮らしやすく、資源・エネルギー循環が進んだ効率的なまち
北海道の優位性を活かし、近年の社会情勢をうまく取り込みながら、人口減少下においても、人々が安心して暮らし続けられるだけでなく、地域資源が活かされ、魅力的で暮らしやすく、外からも人を呼び込み、地域が活性化するまちを目指します。