暮らしやすさの向上にあわせた掛け算のヒント

地域住民の防災意識を高める

高知県黒潮町

「犠牲者ゼロ」をめざす南海トラフ地震対策

キーワード: 住民参加新産業の創出防災機能の強化

黒潮町の基本情報

   高知県 黒潮町の地図
人口:10,404人
世帯数:5,416世帯
面積:188.46㎢
( 令和5年2月28日現在)

取組の掛け算

暮らしやすさの向上
避難困難区域の解消
地区防災計画の作成
暮らしやすさの向上
雇用の拡大

日本一厳しい被害想定に怯まず、「防災の町という資源」を手に入れる

黒潮町は過去の歴史において、100年〜150年に一度南海地震との共存を余儀なくされてきた。2012年3月には、南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高の推計が公表され、最大震度7、最大津波高が34.4mという日本一厳しい数字であった。基本理念として「避難放棄者」を出さないことを前提とし、町として「犠牲者ゼロ」をめざすという覚悟を決めた。役場職員は全員が地域担当制で防災業務を兼務することとし、様々なソフト・ハードの取組を進め、防災対策に真摯に取り組んできた結果、黒潮町は「防災の町という資源」を手に入れた。

避難困難区域に建てられた津波避難タワー
避難困難区域に建てられた津波避難タワー

町民と協働で進めた災害対策

避難空間の整備では、職員と町民がワークショップと現地点検で検討を行い、避難道と避難場所を整備。また避難困難区域には津波避難タワーを建設した。「戸別津波避難カルテ」は津波浸水が予測される地区の全世帯の避難行動調査で、懇談会(参加率63%)でカルテづくりを進め、回収率は100%になった。また地区防災計画は地域住民が自らの地域特性を反映した手作りの防災計画である。その他、避難所マニュアルの作成や小中学生対象の9年間の防災教育プログラムなど様々な取組を行っている。

様々な取組は地域住民との協働で進められた
様々な取組は地域住民との協働で進められた

備蓄品にもなる缶詰製造で雇用創出も

最大津波高34mという想定により有名となったことを逆手にとり、発災時の非常食の確保及び町内の雇用の創出を目的として、地域食材を利用した缶詰の製造・販売を行う株式会社黒潮町缶詰製作所を設立した。あきらめないまちの「産業創造」である。

黒潮町は美しい豊かな海の恵みに満ちた町である。地域に住まうということは、その地の自然の恵みに感謝し、誇りを持ってその地で穏やかな日常を過ごすということ。自然が荒ぶるときはしっかり対処する。様々な取組により、積極的に避難に取り組む姿勢が身につき町民意識の変化に繋がった。防災とはこの町に住まう「お作法」なのである。

黒潮町缶詰製作所
黒潮町缶詰製作所